お香文化の歴史1 ~香の伝来~
日本におけるお香文化の始まりは推古天皇3年(595年)に淡路島に沈香がたどり着いた事とされています。
「日本書紀」にはその時の様子が書かれており、「推古天皇の三年夏四月、沈水、淡路島に漂ひ着けり。其大き一囲、島人沈水を知らず、薪に交てに焼く、其煙気遠く薫る、則異なりとして献る。」とあります。
今の言葉でいえば、「夏に淡路島に一抱えもある沈香が流れ着いた。島民が薪として竈で焚いたら、その煙が遠くまでいい香りを漂わせた。島民はこれを不思議に思って朝廷に献上した。」といった感じです。
ちなみに淡路島は「古事記」や「日本書紀」では日本で最初に作られた島である、と書かれており、淡路島は線香の一大産地でもあります。
当時の日本人は香木に対しての知識をもっておらず、淡路島に漂着した香木もただの流木と思って焚いてしまったが、驚くほど良い香りがしたので朝廷に献上したのだそうです。
そしてこの香木は聖徳太子の下に届けられ、太子は「これこそは南国の佛国に生じる栴壇香である」とし、この木を彫って観音像を造り、余った木を仏前で供養したという伝説もあります。
推古天皇の時代は国家としての日本の基盤が出来上がった時代でした。聖徳太子が摂政に就き、難波に四天王寺が建立され、その翌年には「三宝興隆の詔」が出され、日本が国家として仏教を正式に取り入れることを宣言しました。また十七条憲法の発布や小野妹子ら遣隋使の派遣など、歴史的に様々な出来事があった時代に香木は流れ着きました。それは時代を象徴する香りそのものであったと言えるのではないでしょうか。