お寺の修行は厳しい?日本で一番厳しいといわれている永平寺の修行はどんなものなのか?
私の友人に曹洞宗のお寺の息子がいます。彼とは学生来の付き合いですが、彼が20代後半の時に出家して永平寺に修行に行くことになりました。当時私は福井県で水産加工会社に勤めており、入山前に少し顔を見せてくれたのですが、友人の見慣れぬ頭を見て思わず吹き出してしまいました。これから修行する人に対して大変失礼な話なんですが、友達がいきなりツルツル頭で現れたので我慢できなかったわけです。
彼はどちらかといえばおとなしい性格で、正直厳しい修行に耐えれるのかな、と心配しつつ見送ったわけですが、そこから約3年半もの修行生活を送り、立派に下山することになりました。
私は山を下りる日に彼を車で迎えに行きましたが、修行を終えた彼は修行前とはまるで別人のようなオーラを放ってるような気がしたことをよく覚えています。手土産に買って行ったコーラとポテトチップスは「この世の中にこんなにうまい食べ物があるのか!」といった勢いで彼の胃袋に流し込まれてしまい、修行の厳しさの一端が垣間見えた瞬間でもありました。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、厳しいといわれている永平寺の修行とはいったいどんなものなのでしょう?
永平寺
永平寺は福井県永平寺町にある曹洞宗の大本山で、山号を吉祥山といい、1244年に道元禅師によって創建されました。
永平寺では道元禅師の教えである「威儀即仏法、作法是宗旨」に従い、日常のあらゆる場面で厳格な作法が決められています。
永平寺では修行僧のことを雲水(うんすい)と呼びます。
雲水の日課は次の通りです。
3:30 振鈴(しんれい)~起床~
3:50 暁天坐禅(きょうてんざぜん)朝の坐禅
5:00 朝課(ちょうか)朝のお勤め
7:00 小食(しょうじき)(朝食)
8:30 作務・坐禅
11:00 日中諷経(にっちゅうふぎん)昼のお勤め
12:00 中食(昼食)
13:00 作務・坐禅
16:00 晩課(ばんか)晩のお勤め
17:00 薬石(夕食)
19:00 夜坐(やざ)夜の坐禅
21:00 開枕(かいちん)(就寝)
ずいぶんとハードなスケジュールですね。
ありとあらゆる場面が修行の場
禅宗では日常生活のすべてが修行の場とされており、雲水は午前3時半に起床し、寝具をまとめて洗面所で歯磨きや桶の水で頭から顔を洗うわけですが、洗う順番などの作法が細かく決められています。その後、坐禅やお勤めを行うわけですが坐禅は朝・昼・夜の3回、計5時間ほど行いお勤めは朝・昼・晩の計3回行われ、お勤めに関しても礼拝の作法が細かく決められています。
永平寺では、食事も修行の一環で食器を置く場所や置く順番、箸を置く角度、食べる速度や片付ける方法など細かい作法が決まっています。食事中は私語は禁止で音を立てることも禁止されています。
食事の最後には、刷(せつ)というヘラのような道具でご飯粒やみそ汁の残りなどをこそぎ取って食べ、器にお茶を入れてよく回してきれいにした後にお茶を飲み干します。
21時になると開枕といって就寝の時間となるわけですが、ここでも体を横たえる方法などに細かい作法があります。
修行に休みはない
雲水の人たちには休みの日はありませんが、放参といって4と9の付く日だけは修行が一部免除されます。
この日は入浴や散髪が許されますが、自由時間があるわけではないので外出したりはできるわけではありません。
このような厳しい修行生活が1年以上続くわけですが、自分には耐えられるか自信がありませんね。
修行を乗り切った僧侶の方々、本当に尊敬します。