お香文化の歴史3 ~鎌倉時代・室町時代~

武士とお香

 

平安時代は貴族の生活の中で香文化が成熟していきますが、鎌倉時代から室町時代になると大陸との貿易が盛んになり、交易をする中で多くの香木類が日本にもたらされるようになります。

平安時代の貴族文化と比べて武家文化は写実的であり、そのようなスタイルは香に対してもよく表れています。

平安時代の「六種の薫物」は複雑な香りを楽しむものでしたが、武士たちは沈香一木の香りを楽しむ「一木聞き」を好みました。また、自分の所有する香木を較べ競う「香合わせ」が盛んになりました。

東山文化とお香の楽しみ

 

室町時代といえば、金閣の北山文化、そして銀閣の東山文化ですが、現在のいわゆる日本文化と呼ばれているものの多くは東山文化という枠組みの中で形成されました。

建築では、床の間を備えた書院造は東山文化の特徴であり、華道や茶道もこの時代に生まれました。

香道・御家流の始祖である三條西実隆は宮中の「お香所」の任にあり、御所や御内裏で香宴の指導的立場にありました。

この時代の香の楽しみ方は少し前の香木を1本丸ごと焚いてしまうという方法ではなく、香木に名前を付け、小片にし、香炉を吟味して楽しむというものになりました。

また、三條西実隆をはじめ、武家の志野宗信、連歌師の宗祇、牡丹花肖柏などによって、香の作法の基礎が作られました。

この頃に香を使った楽しみとして「組香」というものが出来ました。

組香とは、数種類の香を焚いてそれを識別するのですが、正解を和歌や文学の主題で答えるというものです。

代表的なものとして「源氏香」というものがあり、源氏物語の52巻の巻名がそれぞれの香に付けられており、単なるにおい当てでなく教養の上に成り立ったゲームであるといえます。

また、「源氏香之図」は蒔絵や着物などのさまざまのものにデザインとして使用されています。

 

源氏香之図