お寺に世襲が多いのはなぜ?
お寺が世襲が多くなった背景
私たちがお坊さんになりたいと考えた時、お寺は世襲制で、お寺に生まれた子でない限り簡単になれないというのが世間のイメージだと思います。
元々仏教では「女犯」といって出家した者は戒律により女性との性行為が禁じられており、当然妻帯も禁じられておりました。
また飛鳥時代に成立した僧尼令によっても異性間の性交渉は犯罪とされ処罰の対象とされていましたが、この取り締まりは時代によってちがい、鎌倉時代や室町時代では僧侶でありながら妻帯をしている人も多かったといわれています。
日本で普及した大乗仏教では、上座部仏教の戒律ではなく大乗仏教の戒律である菩薩戒にのみ従うように説かれており、平安時代にその考えを伝教大師・最澄が日本に持ち込み天台宗において上座部仏教の戒律をすべて廃止にしたことにより、浄土宗・浄土真宗・禅宗などの鎌倉仏教はその流れを受け継いで女犯は自律の戒ではあるけれど、処罰の対象である菩薩戒のうえではなくなり、その結果僧尼令などの法律があるにもかかわらず妻帯をして一般の人と変わらない暮らしをする僧侶が多かったそうです。
ちなみに親鸞聖人は教えとして日本で初めて僧侶の妻帯を認めたといわれています。
明治維新と僧尼令の廃止
長年にわたってそのような時代が続きましたが、明治時代になると政府は国家神道政策や文明開化の一環としてお寺への自活運営を促すことになります。その際に僧尼令は廃止されて僧侶の肉食と妻帯が認められることになります。
さて、明治時代より前のお寺は、戸籍の管理など実質的に役所の役割を果たしていたので国から多大な助成を得ていました。ところが明治に入って自立運営をすることになり、妻帯せずに運営することは難しくなりました。
お寺の僧侶には自分のお寺を守り続ける責任があり、お寺の運営を支えてくれている檀家の方々の存在があります。
お寺の子供は、幼いころから檀家の方々との接点もあり仏事にも接しているため、自分のお寺の風習に対する理解があり、またこれからも安心して付き合っていけるという意味で他所から新しいお坊さんが来るよりもお寺の子供が跡を継いだ方が心配が少ない、というバイアスが僧侶側・檀家側ともにかかっているからだと思われます。
ですがお寺が必ず世襲でなければならないわけではありません。
最近では住職が減り、近所にマンションを借りてお寺に通う僧侶や、一人で3ヵ寺、4ヵ寺を管理する住職もいらっしゃいます。
また跡取り不足に悩むお寺も多くあり、お寺=世襲制という図式は少しずつ変化していっているかもしれませんね。