パキスタンで世界最古?の涅槃仏の一部公開 イスラム教国家にある仏教遺跡
先日、パキスタンで1700年前の涅槃仏の一部が公開された、というニュースが報じられました。
涅槃仏が見つかったのは仏教寺院遺跡のあるバーマーラで、1929年の発見から88年を経て発掘が再開され、高さ14メートルの涅槃仏が出土しました。
地元の担当者によると「これは3世紀のもので、世界最古の涅槃仏となる」とのこと。
この地方はかつて、2300年前のマウリア朝アショーカ王時代に定着した仏教文化の中心地だったそうな。
公開の目的は観光促進とともに、イスラム過激派が混乱をもたらしている地域における宗教間の融和を目指す狙いがあるそうですが、イスラム教国家における仏教遺跡ってどんなものがあるのか気になったので調べてみました。
ボロブドゥール遺跡(インドネシア)
インドネシアは人口2億3000万人で世界第4位、そのうち87%がイスラム教徒という世界最大のムスリム人口を抱える国家で、仏教徒の割合は1%以下となっています。
そんなインドネシアのジャワ島中部にある世界遺産「ボロブドゥール遺跡」はなんと世界最大の仏教寺院で、シャイレーンドラ朝時代の8世紀に建造されました。
ボロブドゥール遺跡
ボロブドゥールは寺院はピラミッド状の構造で内部空間を持たないのが特徴で、総延長5kmにおよぶ方形壇の回廊には、仏教説話にもとづいた1460面におよぶ浮彫彫刻レリーフが時計回りにつづいており、登場人物は1万人におよぶとされています。
方形壇回廊のレリーフ:Wikipedia
また、ボロブドゥールは、それ自体が仏教的宇宙観を象徴する巨大な曼荼羅といわれ、一説には須弥山を模したものと考えられています。
バーミヤン遺跡(アフガニスタン)
バーミヤン遺跡はアフガニスタンの首都カブールの北西230kmの山岳地帯に位置するバーミヤン渓谷(バーミヤーン渓谷)に設定された世界遺産で、5世紀から6世紀ごろに高さ55m(西大仏)と38m(東大仏)の2体の大仏をはじめとする多くの巨大な仏像が彫られ、石窟内にはグプタ朝のインド美術やサーサーン朝のペルシア美術の影響を受けた壁画が描かれました。バーミヤーンの仏教文化は繁栄をきわめ、630年に唐の仏僧玄奘がこの地を訪れたときにも依然として大仏は美しく装飾されて金色に光り輝き、僧院には数千人の僧が居住していたそうです。
しかし、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻以来アフガニスタンで続いてきたアフガン紛争によって大きな被害を受けました。2001年には当時のアフガニスタンのタリバーン政権の手により爆破され、遺跡は壊滅的な被害を受けました。紛争終結後の調査により、一連の混乱と破壊により大仏のみならず、石窟の壁面に描かれた仏教画のおよそ8割が失われたと報告されています。
破壊後の大仏:Wikipedia
イスラム教では偶像崇拝が禁止されていますが、教義と遺産保護は全く別の話です。
一部の過激派の行動はとうてい受け入れられるものではありませんが、とても難しい問題です。