香の十徳

香りは古くから人の生活を豊かにしてきましたが、仏教では仏に香りを捧げることを重要な事として考えてきました。この捧げる行いを供養といいますが、香・華・灯は仏前供養の基本であり、仏壇には必ず香炉が供えられ、そこで線香などが焚かれます。

また「香を聞くを以って佛食と為す」と説く経典もあり、お香は仏や亡くなった人々の食べ物であると考えられてきました。

お香は心身を清め、お香の香りは空間を清めます。また様々な香りを味わうという楽しみも与えてくれます。

香の十徳

 

お香を扱う上で知っておきたい言葉として「香の十徳」というものがあります。

香の十徳は、11世紀の北宋の詩人黄庭堅(こうていけん)の作で、一休さんのモデルになった一休禅師が日本に紹介したとされています。

その内容は、

一. 感格鬼神・・・感は鬼神(きじん)ニ格(いた)る

ニ. 清淨心身・・・心身を清らかにし

三. 能除汚穢・・・能(よ)く汚穢(おわい)を除き

四. 能覺睡眠・・・能(よ)く睡眠を覚まし

五. 静中成友・・・静中(せいちゅう)友と成り

六. 塵裏偸閑・・・塵裏(じんり)閑(ひま)を偸(ぬす)み

七. 多而不厭・・・多くして厭(いと)わず

八. 寡而為足・・・寡(すくな)くして足れりとなし

九. 久蔵不朽・・・久しく蔵(たくわ)えて朽ちず

十. 常用無障・・・常に用いて障り無し

 

とあります。

 

これを現在の言葉でわかりやすくすると、

1.感覚が鋭くなる

2.心身を清浄する

3.汚わい(汚れ)を除く

4.眠気を覚ます

5.静かな時には友になる

6.忙しいときに閑をもたらす

7.多くを使ってもいとわない

8.少なく使っても足りる

9.永く保存しても腐らない

10.常用しても差し支えない

 

となります。

 

香の効用が分かりやすく伝えられていますね。