出家とは

お釈迦様は29歳の時に出家し35歳で悟りを得て仏陀となり、以後80歳で亡くなるまでインド各地を巡り説法を説いて回りましたが、「出家」とは具体的にどういうことなのでしょうか?

 

出家

 

出家(しゅっけ)とは、俗世間の生活を捨てて僧侶となり仏の道の修業をすることで、普通の生活をしながら仏教を信仰する「在家(ざいけ)」の対義語としての意味があります。

日本で出家するというと「1人孤独な修行をする」という、とてもストイックなイメージがありますが、本来の出家は俗世的な価値観とかけ離れた別の価値観を持ちたいと思う人たちがおこす行動で、一般社会から離れて特定の価値観で生きたいとおもう人たちが集まって別のコミュニティを作ることです。

仏教の場合、このコミュニティ(出家僧侶の集団)をサンガ(=サンスクリット語)といいます。

ちなみにJリーグの「京都サンガ」のチーム名の由来はここからきています。

 

仏教が生まれる前からインドではバラモン教の教義によるカースト制度という厳しい身分差別制度が社会に定着していましたが、いつしかこのバラモン教を受け入れない人々が出現しました。

彼らは当時の社会通念であったバラモン教の世界観ではいい生き方ができないと考え、その社会から離れる生き方を選びました。

そしてそのような生き方のことを本来の意味で「出家」と呼んでいます。

 

出家の手続き

 

では当時の出家とは具体的にどのようにしていたのでしょうか?

出家は、ある日当然「今日から出家します!」といって簡単にできることではなく、親権者の承諾が必要でした。

出家者には、比丘(びく)・比丘尼(びくに)・正学女(しょうがくにょ)(式叉摩那(しきしゃまな))・沙弥(しゃみ)・沙弥尼(しゃみに)の5種類があります。

それぞれの身分になって出家者となると世俗時の苗字や名前を捨てて、新しい名前(僧名)がつけられます。

出家者は自分の家庭や親族の冠婚葬祭の義務がなくなり、財産の相続や分与の権利を放棄することになります。

 

托鉢(たくはつ)

 

さて、出家した人が行う修行の一つとして托鉢というものがあります。

信者の家々をまわり、生きるために最低限の食糧を乞い信者に功徳を積ませる修行ことですが、いわゆる信者によるお布施を修行に取り入れたものです。出家者は最低限の生活必需品しか所有せず修行に専念するため、生きるための最低限の食糧を外部から調達する必要があり、古代仏教でも托鉢は取り入れられました。東南アジアの仏教国では今でも毎朝行われています。

「法句経」という経典によると、お釈迦様が托鉢に行った際、ひとりのバラモンが論戦を挑んできましたが、バラモンの方が逆に感化されて仏教徒になったというエピソードも収録されています。

 

お釈迦様はお布施という生き方を取り入れ、信者には「誠実に修行している聖者の姿」を示しました。

時代が流れた現在もお坊さんがみんなから尊敬される存在なのは、社会に対して誠実な生き方を示しているからなのですね。