奈落・娑婆とは?~身近な仏教用語~

奈落(ならく)

 

奈落とは、仏教における地獄のことで、サンスクリット語でナラカを音写したもので、ナラカは「地下にある牢獄」を意味します。

 

 

 

これが転じて劇場における舞台の下や歌舞伎の花道の床下の空間を奈落と呼ぶようになりましたが、昔の舞台や花道の床下は深くて暗いところだったからだそうです。

また一説によると、「華やかな舞台の裏には常に嫉妬があり、それが怨念となった魔物が薄暗い舞台下に潜んでおり、時折これが悪さをするから舞台事故が起こる」とかつては信じられていたことによるものとも言われています。

 

 

 

 

娑婆(しゃば)

 

娑婆とはサンスクリット語でサハーの音写で、お釈迦さまが衆生を救い教化する世界、つまりこの世のことです。

テレビやドラマで、刑務所から出所した直後に「やっぱ娑婆の空気はうめえ」といったセリフを耳にしたことがあると思います。ですが仏教的にいえば、「娑婆=この世」は不完全で苦しみに満ちた世界であり、本来ならば娑婆という言葉に肯定的な意味合いはないはずなのですが、現在の意味で「娑婆」という言葉が使われるようになったのは江戸時代になってからだそうです。

 

 

 

当時、吉原などの遊郭ではお金を払えば身分に関係なく自由に心ゆくまで遊ぶことができたので、遊郭を「浄土」見立てて、遊郭の外の世界を「娑婆」と呼びました。

 

 

しかし、遊郭の中で束縛されている遊女からすると、遊郭の中は「地獄」で、外の世界である「娑婆」の方が自由に過ごせる世界であったわけで、この遊女目線での意味が一般化していき、刑務所や軍隊、閉鎖病棟などの拘束を受ける場所と外の世界を比較して、自由に過ごせる世界という意味で娑婆という表現を使用するようになりました。